2023年05月19日 訪問リハビリテーションこころ
リハビリ対象者は、病院では「患者」、訪問リハビリ(在宅)では「利用者」と言います。
自宅で生活する利用者さんを「生活の主体者」として捉えるという視点です。
病院に入院していても、自宅にいても療法士が「リハビリ」を行います。
同じリハビリを行うと思いますか?
「全く異なる」とは言いませんが、病院のスタイルのまま自宅でリハビリすると失敗することが多々あります。
私は病院での入院・外来リハビリを6年経験してから訪問リハビリに出ましたが、失敗の連続でした。
同様に、病院のリハビリ経験者が訪問リハビリに出て、悩んだスタッフを何人も見てきました。
病院:療法士のホーム、患者は客
自宅:利用者さんのホーム、療法士は客
療法士がこの認識を誤るとうまくいきません。
それぞれが最も異なるのは、障害に対するリハビリか、生活に対するリハビリか、という視点でしょうか。
入院は「自宅退院するために必要なこと」、訪問は「自宅生活を継続するために希望すること」を行います。
(語弊があるかもしれませんが)
例)足を骨折して現在、車椅子の80歳女性。家に帰るためには歩く能力が必要
予後予測:1か月後には足の筋力が向上し、T字杖(一本杖)歩行を獲得できそう
入院中:療法士主導で「T字杖練習をしますよ」となることが多いです
(最大限の身体機能を発揮できるように、という考え方)
⇒リハビリはT字杖歩行練習を中心に行い、獲得したらT字杖で病棟を歩き、自宅退院
訪問リハビリ:その利用者さんが「T字杖は疲れる、家の中は歩行器で歩きたい、楽だから」と要望
⇒利用者さんの要望に沿って、歩行器で歩けるよう、その環境調整も含めて練習を行います
(本人や多職種とよく相談した上で)
「歩行器で歩きたいのに、T字杖で歩かないと療法士さんに悪い気がして入院中は言えなくて…」
退院した後、訪問リハビリを開始した利用者さんがら上記のような話は結構聞かれます。
入院経験がある方、入院中に医療スタッフに、自宅にいる時ほど言いたいことを言えましたか?
自宅に帰ってからは「ご本人がやりたいこと、したい生活」を行えるよう支援します。
訪問リハビリは基本的に介護保険で行い、介護保険の制度は「利用者主体(本位)」が原則です。
「○○m歩けるようになりました」「関節可動域が○○°改善しました」客観的な指標の改善は大切ですが、
訪問リハビリでは利用者さんが望む生活に近づけたか、それに向けて支援できたか、の方が大切です。
療法士の自己満足にならないようにしなければなりませんね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。