誤嚥性肺炎のリスクを減らそう、最期までおいしいものを食べよう ⑤

2024年09月08日 こころ院長ブログ

嚥下訓練、評価において、医師の役割とは、なんなの?

まずは検査を行う人ですね。

検査は、今のところ医師、歯科医師しかできません。

検査自体に誤嚥性肺炎、窒息のリスクががるからです。

こういうと、怖いから受けたくない、ということにつながりかねないのですが、

人が生きていくうえで、リスクがないことはありません。

検査のリスク、薬の副作用などなど、ありますが、そもそも、検査で誤嚥や窒息が

起きるということは、検査をしないで飲食することでも誤嚥や窒息が起こる、

ということなので、必ずしも検査のリスク、とは言えない。

むしろ飲食のリスクというべきことでしょう。

在宅医療において、誤嚥の問題、嚥下障害の問題は、比較的ポピュラーな症状です。

ですから、在宅医であるならば、嚥下障害、誤嚥性肺炎、についての知識と経験は、

持っていた方がいいでしょう。

できれば、嚥下内視鏡VEを自分で出来たら、それは、患者さんにとって大変なプラスになります。

なぜならば、嚥下評価を在宅で受けられるわけですから。

VEを担当の訪問言語聴覚士同席のもと、検討しながら施行することができます。

それにより、普段、飲食をする条件下で、現在の状態や今後のリハビリプランを鑑みながら、

必要十分のVEを行うことができます。

もちろん、外来、入院検査で、時間を合わせて担当療法士が検査に同席させていただけると、

外来、入院でも在宅VEにかなり近い成果をあげらられることでしょう。

検査は、医師の仕事として、それはいい。

もっと大事なことは、言語聴覚士の仕事に対して、誤嚥のリスク、窒息のリスクが伴うことを

理解したうえで、そのリスクに対する責任と対処を、主治医がちゃんと持つということ、

またそれを療法士にしっかりと表明して、療法士との信頼関係を築くこと。

誤嚥は、STにはつきもの。

しかし、誤嚥性肺炎を起こしたときにSTを𠮟責したり、嫌味を言ったり、責任を押し付けたりする

医師がいると聞きます。

言語道断です。

それをやっちゃぁ、STはリスクに対して過度に意識しすぎて、萎縮し、積極的な嚥下リハビリができなくなります。

積極的にできないということは、得られる効果が何割も減となり、結果として、十分な食事ができない、

さらに、嚥下能力の向上が損なわれ、結果として誤嚥性肺炎・窒息のリスクがあがることになりかねません。

そして、誤嚥や窒息を起こしたSTは、少なからず、それに対する責任と恐怖を抱き、今後の嚥下リハビリにおいても

トラウマを持ち、積極的に施行できなくなる可能性があります。

主治医は、療法士に対して、リスクは理解し、最大限に気を付けるとして、何か不測の事態が起こっても、

万事責任は持つから、思いっきりリハビリしなさいと、しっかりといってあげることがとても大事です。

頼れるバックアッパーがいるからこそ、最前線のSTが、最大効力を上げる嚥下訓練に取り組めるのです。

嚥下障害がある患者さんに、事なかれ主義で、食事形態を下げる、食事をさせない、飲食をさせない、経鼻移管や

胃瘻を導入する、点滴にする。。。。。

そういう施設や病院を比較的よく聞きます。

容易に訴えられる、だから、悪い事象が起こりそうなら、良いと思われることもさせない、しない。

経営上は、〇ですが、医療・介護上は、× です。

もし自分なら、自分の家族なら、リスクのために大きな楽しみをすべて禁止されたら、どうでしょうか?

そのためには、ご本人やご家族に、リスクについてしっかりインフォームドコンセントを行い、理解してもらうことは

当たり前ですけどね。

それでも、たまにもめることはあるのかもしれませんが、それはもう仕方のないことだと割り切るしかありませんね。