2022年09月18日 こころ院長ブログ
最近では、病院のセカンドオピニオンは、当たり前になってきました。
つまり、納得がいかない、気に入らない病院を、別な病院に患者さんの医師でかえることができる。
いまいち、訪問診療については、セカンドオピニオンは浸透していない様子。
いいんですよ、訪問診療だって、気に入らなかったら、別のクリニックに変えたって。
訪問診療してくれるクリニックなんて、売るほどあるんだから。
当クリニックにもたまに、他のクリニックから、病院からのセカンドオピニオンで見えられる方がいます。
ただ、セカンドオピニオンで来てくれたからと言って、特別扱いはありません。他の方々と同様に、当クリニックらしく、いつもの診療サービスを提供するまでです。
リハビリにおいてもセカンドオピニオンは存在します。
ですが、こちらも全然、浸透していないようです。
通所に通っているけど、全然良くならない。段々動けなくなる。痛みが強くなる。
外来リハビリに通うのが大変、身体の一部分しかしてもらえない、混んでる、よくならない。
訪問リハビリしているが、全然良くならない、ただ立ったり座ったりしているだけ、マッサージしてもらっているだけ。
そのほか、療法士が生理的に嫌、痛い、気持ち良くない、厳しすぎる、リハビリが軽すぎる、内容がマンネリ、詰まんない、おしゃべりすぎて疲れる、話をしなさ過ぎて気まずい・・・・。
いろいろな不満や不平があるようです。
利用者側の心理や心の問題がある部分もあります。どんなサービスをしても、誰がやってもよくはならない病状や満足をしない心などもあるかもしれません。
それでも、サービス側の問題があることが多いです。
そういった場合に、リハビリを辞めてしまう例が散見されます。
もうリハビリなんてと。
その結果どうなるかというと、リハビリで、少しでも保たれていた筋力体力、ADLが一気に崩れ始め、転倒・骨折・病状悪化と繋がり、入所・入院・搬送・・・最悪、命を縮めてしまう可能性もあります。
リハビリなんて、とあきらめる前に、リハビリじゃなくて今のサービス・事業所・担当者が悪いのかもしれない。別な人・事業所・サービス形態に変えてみたら、今よりもよくなるかもしれないと考えるべきです。
私は、入院・外来・通所・訪問リハビリ、すべての指示医を務めてきましたので、どのサービスがどういった効果に適しているかを熟知しています。いままでのブログ記事からは、ともすれば、訪問リハビリ信者のようなコメントが多いですが、基本的には中立です。
ただ、在宅医療・地域医療においては、リハビリの効果に関しては、訪問リハビリが最強だと考えています。
マンツーマンの訓練、40~60分の訓練時間、普段生活している生活圏での具体的なADL訓練、生活圏でのリスクヘッジや環境調整、具体的な宿題トレーニングの指導や注意書きなどもできること、お迎えや通所・通院する時間や労力の軽減と持っている体力・集中力をすべてリハビリに使えること、主治医と看護師・介護士・ケアマネージャーとの密な連携がとりやすいこと、家族が訓練を見学できること、家族指導が直接繰り返しできること、服薬管理などの手伝いの声掛けなどができること、介護サービスの一環で本人の在宅における様子を確認する目線の一つとなれること・・・・・、挙げればきりがない。
訪問リハビリで改善しないような能力については、通所でも外来リハビリでも、改善は難しいかもしれない。本格的な機器を用いて、治験的なトレーニングをしてという事であれば別ですが。
ただ、通所や外来においても、得意分野やメリットはいっぱいあります。
問題は、療法士の個々人の能力と想いです。
訪問リハビリといえども、療法士の能力が足りなければ、患者との相性が悪ければ、なんら効果を上げることはできない。もしかしたら、変わっても、成果を上げられないかもしれない。その時は、サードオピニオン、もしくはあきらめるという方法を取ることになるか。
そういったことも含め、訪問リハビリを担当する療法士は、想い、知識、技量、コミュニケーション力、向上心、探求心・・・、色々なものを必要とする。そういったものを数多く備えた、他の人よりも何か強く持っている療法士が、あの療法士さん上手だね、あの人にやってもらうとすごくいい、あの人にやってほしい・・・などなど言われるようになるのだと思う。
通所や外来・病院リハビリと比べて、訪問リハビリにおいて、特徴的に求められる能力は、現場力。患者さんのホームグラウンドで、どれだけのパフォーマンスができるか。エレベーターなしの5階かもしれない、段差いっぱいかもしれない、物にあふれて畳1畳分しかスペースが取れないかもしれない、ベッド上でしかできないかもしれない、ものすごく大勢の家族にいつも囲まれているかもしれない。千差万別の世界で、最高のパフォーマンスを提供する力。その力は、実戦でしか身につかないもの。1例1例、大事に、検討して、反芻して、消化して、身に付けていくもの。
残念ながら、医療においても、看護においても、リハビリにおいても、介護においても、ケアマネージメントにおいても、表現が難しいが薄い関りとなっていることが多く見かける。この患者さん、利用者さんをどうしたら今より良くできるだろうか?なにかよりよい方法はないか?もっと何かしてあげられることは無いか?
患者さん、利用者さんを一人の人として、見ているだろうか?
それぞれの医療・看護、介護、リハビリ、ケアマネージメントの職員が、一人を見ているだろうか?自分の持ち患者さん、利用者さんの大勢のうちの一人、として、軽く見てしまってはいないだろうか?
認知症だからディサービスに通わせる、グループホームに入所させよう、独居は危ないから在宅は辞めさせよう、転倒リスクがあるからリハビリ、独居だからヘルパー、日々介入するから小規模多機能、なんとか月に1~2回でも通ってきているから外来通院継続、心配だから入院させてほしい・・・・。画一的な判断をしていないだろうか?
周りから見てどんなに危なくても、どんなに大変そうでも、本人が、最期まで自宅にいたいという思いが強いなら、何とかそれを支えてあげられるようなサービスを提供できないかどうか、ちゃんと本気で考えているかな?
本人の意思を尊重して、ということが必ずしも正解とも限らない。本人の認知力が低下しているときの意思は、必ずしもまっとうな意思とは限らない。わからないままの生命の危機を伴う意思なら、保護が必要となることもある。
要は、どれだけ、想いと労力とを、一人一人の患者さん・利用者さんにかけているかどうか。
クリニックや事業所によっては、1日何件のノルマがあったりする。数を回れば回るほど、という歩合制ってこともあるかもしれない。最低、1日何件回らないと白い目で見られる、なんてこともあるかもしれない。そうなると、1件1件当たりの利用者さんとのかかわりが薄くなりやすいのかもしれない。1件1件をしっかり評価して検討して計画して実施して振り返って報告して・・・、そういったことをする時間も体力もないのかもしれない。そんなことは、利用者さんには関係ない。利用者さんにとってはただ一人の療法士なんだから。
抱えきれない仕事は受けてはいけない。受けたからには、同等の良好なサービスを提供しなければならない。
脱線しましたが、要は・・・
通所・外来リハビリで、不満があれば ⇒ 事業所・病院を変えるか訪問リハビリにする
訪問リハビリで不満が有れば ⇒ 事業所を変える、または通所・外来リハビリにしてみる
それでもダメな時は・・・、さらに変える、もしくはリハビリを続けるかやめるか。
たった1度の不満、不平で、リハビリをすぐにやめてしまうのは、一番ダメ。
リハビリが有効ではないのか、担当したサービスや療法士がダメなのか、検証しないと。
最終的に不利益をこうむるのは利用者さん自身なのだから。
手術は、何々先生が上手とか神の手とか言われたりするけど、リハビリについては、どこどこの事業所が凄いとか、何々療法士が上手とか、そういった話は、ほとんどされない。それほど、リハビリについては、興味が薄すぎる。誰がやっても一緒だと思われている。そんなことは無い。誰がやるかで、とんでもなくリハビリの成果が変わることを目にしてきている。
実際、私自身、よく知っている療法士同士で、患者さんの状態や意向を検討し、担当を変えたことがしばしばある。担当を変えることで、その後のADL・QOLの伸びが格段に良くなった経験がある。その療法士たち一人一人が別に、能力が劣っているとか優れているとか、そういった面もありはするが、所属している事業所の方針であったり、得意分野が違ったり、経験の差があったり、患者さんとの相性だったり・・・、色々な要因がかかわります。そこまで見えているリハビリ指示医がいてくれたら、訪問リハビリはもっとその能力を発揮できるのかもしれません。
本格的な訪問リハビリの指示医不足・・・・・、そこが根本にはあるのかもしれない。指示医自体が、リハビリなんて介入してくれればどこでも誰でもいい、と思っている節がある。リハビリ療法士に対して、個として見ていない。名前すら知らない、みたこともない、話したこともない・・・・。そんなんでは、相性なんてわからないですよね。
言い方は悪いですが、自分の患者さんをよくするためのサービス提供の ”駒” の特性を知らずして、布陣しても、よりよい戦果を挙げられるとは到底思えない。
少なくともその駒の所属している事業所の特性くらいは知っておかないと。
こういったサービスを入れようと指示を出しながら、サービス介入するならどこの事業所でも空いてるところでいいよなんて、本来は無責任だと思う。制度上、一定の事業所に誘導することは禁止されている。それでも、患者さん本人のメリットを考慮して、こういった事業所があるよ、あうとおもうよ、いいと思うよ、というアナウンスは、してあげた方がいい。サービスの良くない事業所や相性が合わない事業所にも平等に介入する権利を与える、というのは、ビジネスの話で、その目線は、患者さんファーストではなく、企業ファーストの目線だ。医療、看護、介護は、常に患者さんファーストで動く必要がある。