在宅医療に新規参入するための心構えと想い

2022年07月27日 こころ院長ブログ

今後も、在宅医療、訪問診療の分野には、続々と新規参入があるでしょう。

なぜなら、今一番、これから一番必要とされる、需要がある分野の一つだから。

もし新規参入するなら、以下のことは最低、想定しておかなければならない。

①24時間265日 往診出動態勢をしっかり想定しておく。

 病院なら、当直医は出動できないので、当直+待機出動対応医師をそろえる必要があります。

②訪問看護ステーションとの連携

③ケアマネージャーとの連携

④訪問リハビリテーションとの連携

⑤リハビリについての基本的な知識と経験

⑥訪問薬局との連携

⑦近隣医療機関との連携

⑧診療対応範囲可能範囲をあらかじめ決めておく、どの地域で展開するのか、同業者はどのくらいいるのかを把握する。

 最初は患者さんが少ないので、あっちもこっちも受け入れてしまいがちですが、後々、患者さんの数が増えた時に、訪問予定が立ちづらいのと、緊急時の移動時間が多すぎて対応が遅れてしまう事などもあらかじめ考慮しておく必要があります。

⑨自分が責任をもって深慮できる人数の上限は、何人なのかを想定しておく

⑩診療に必要なスタッフ、マンパワーは、すぐには集まらないので、あらかじめスタート時から確保しておく。

⑪在宅医療に精通した医療事務員の確保

⑫できれば、あらかじめ同行体験などで現場で行われていることや流れを見ておくこと。

⑬相談できるすでに実績のある在宅クリニックを見つけて、相談すること

⑭自分のクリニック・病院の特色をはっきりさせる。

⑮在宅医の会・医師会などの同業者の集まりに顔を出して情報を集めたり、自院の存在を認識してもらう。

⑯医師会や道・市・保健所などへの協力は積極的に行う。自院の利益や都合の事ばかりを考えないで、それこそ地域の為に貢献する。

⑰外来も細々とでもいいのでやる方がいい。休日当番病院なども地域貢献としてやるべき。

 外来、入院、訪問診療は、ひとつながりの地域医療なので、入院は仕方ないとして、外来と訪問の両方の選択肢を自院で持っている方が、患者さんの選択肢が増える。外来に戻すときに他院に紹介しなければならないとしたら、きっとその選択肢は提示されないことが多いでしょう。

一定の期間だけ通院できない患者さんを通年訪問診療に、というのは、医療費の無駄遣い、とも考えられます。

⑱かかりつけ医、という観点から、コロナ感染などで簡単に撤退しない覚悟を持つ。

⑲エビデンスを大事にする反面、エビデンスにとらわれず、患者さんが良くなる、楽になる可能性があることを選択肢として持つ柔軟性を持つ。

⑳なんでもかんでも簡単にDNRにしない。ICで、緩和治療、DNRとして同意をもらっておいて、やれる可能性があることを提示しないでただ見守る、というようなやり方はお勧めしない。自分自身の主義や主張を患者さんに押し付けない。あくまでも選択肢として提示し、リスクとメリット、デメリット、可能性などを説明して、患者さん自身及び家族に決定をゆだねる。医療者としての意見を求められたら、正直にアドバイスする。そんなスタンスがいいのではないでしょうか。

㉑なんでもかんでもすぐ入院、もしくは入院はダメ、というような考えではなく、ケースバイケースで、其の時、有用な決断をする柔軟性が必要。

㉒在宅医療を行う、地域医療を行う病院やクリニック、医師がある程度高額の報酬貰うことは賛成です、だって、大変だもの。しかし、高額報酬を目的とせず、頑張った結果として自然に高額報酬になる、そんな風に考えた方がいい。医療においては、ビジネスだが、公平性や正義性、性善性のようなものが求められます。お金のことを考え始めると、入院タイミングを逃したり、判断を誤ったり、診るべき人を断ってしまったり、と地域医療としての役割を果たせなくなることが起こりかねません。あくまでも、我欲を捨てて、良き地域医療お行い、地域に貢献するんだということをベースに、地域医療に参画してほしいです。医者になって儲けようと思う人は医者に向かない。医師は、大変な仕事だから、素晴らしい仕事をしているから、多くの人の為に自分を犠牲にして働いているから、いっぱい給料をあげてほしい、上げてもいいんじゃないかなと周囲から思われるような人であってほしい。医師ならば、実際に診療しているとき以外でも気になる病状の人のことを考えていたりするもんです。

㉓わが町にこのクリニックがあってよかったな、わが町の誇りだ、と思われるようなクリニック運営を目指してください。

などなど、いくらでも書けそうなので、この辺で切り上げます。

上記のものは、新規参画を目指す若手医師の方々へのメッセージでもあり、初心に帰る為の自分自身に送るメッセージでもあります。よくもわるくも、慣れというものが人にはあります。待機慣れすれば、待機すること自体苦痛ではなくなります。そういったプラスのものもあれば、慣れによって、熱き想いが若干冷めてしまう事もあります。

そんなことが無いように、定期的に、スタッフと地域医療についての雑談をしながら、熱き想いに薪をくべる、そんな作業を定期的に行っています。

熱き想いを持ったスタッフを集め、身の回りに置くことで、薪をくべることができます。

そういった意味では、地域医療を行うクリニックでは、スタッフは資格を持っていれば誰でもいいというわけではありません。クリニックの想いに共感してくれるスタッフがいて初めて、クリニックの想いを維持、実現できるのだと思います。