認知症の介護

2022年06月27日 こころ院長ブログ

認知症の方々の介護は、家族がする場合と施設・病院がする場合があります。

ですが、認知症の対応については千差万別。

もちろんこれが必ず正しいということが、すべてにあるわけでもありませんが、してはいけない事、はあります。

ご家族の方々は、もちろん医療従事者でもないわけで、間違ったり、困ったり、いっぱいすると思います。

ですが、いまだに、施設でも、病院でも、医療従事者が、認知症の方々の対応にあれ?と思うことをしていたり、手を焼いたりしているのが実情です。

認知症は、高齢化社会においては避けられない病状であり、地域医療、介護の仕事に携わる以上は、医師であれ、看護師であれ、療法士であれ、薬剤師であれ、介護士であれ、ケアマネージャーであれ・・・・、誰しもが、対応できなければいけないと思います。

認知症の専門家というわけではありませんが、地域医療を担い、多くの認知症の患者さんと触れ合っている中で、やめた方がいいんじゃないの?といいことが多々あります。

もしかしたらそれを辞める、もしくは出来たらやった方がいいことをやるだけで、患者さんたちが少しでも幸せに暮らせるんじゃないかな。

例えば、すぐに薬を使う。これダメだと思う。

もちろん、アルツハイマー型認知症などに、抗認知症薬・漢方薬を使用するのは、悪いことではない。

が、寝ない、よくわからないことを言う、暴れる、だから、眠らせてほしい、向精神薬を出してほしい・・・・、それって、常識なの?

結構な施設や病院・ケアマネージャーさん・訪問看護などからで、そういう依頼を受けますが、それって、本当に正しいことなのかな?

まずは、薬以外でのできることってないのかな?って、すべてを尽くしたのかな?

四六時中大暴れだったら、それは大変だけど、時々、何らかのときに、夜だけ、とか暴れたりするなら、何か原因があるのでは?

たとえば、夜に外へ出かける服を着たいと本人が着る、それを家族や施設職員が夜はダメ、パジャマを着てねないと、寝心地悪いし、暑苦しくて熱中症になるかもしれないからと無理やり着せないようにする、すると本人は、大暴れしたりする、結果寝ない、落ち着きなくなる。だから、向精神薬・睡眠薬を処方してほしい・・・・。

あれ?

おかしいな。と思いません?

寝るときにジーパン履いちゃダメなの、ニットを着てちゃダメなの?パジャマじゃないとダメなの?誰が決めたの?酔っぱらってスーツで公園で寝ているサラリーマンだっていますよね?本人がこれを着て寝たいと言っているんだから、生命の危険が無ければ、そうかそうかと寝かせてあげればいいんじゃない?周りがとやかく自分の常識を押し付けて、あれはダメこれはダメと、窮屈な生活を押し付けなければ、気持ちよく寝れるかもしれないよ。薬なんて必要ないかもよ。

夜中に部屋から出てくる・・・、ダメダメと部屋に戻してベッドに寝かせようとする。でも起きる。薬頂戴。???

部屋から出てくるということは、歩きたいのかな?何か確認したいことでも、気になることでもあるのかな?傾聴して、そこを解決したら、気持ちよくベッドに戻らないかな?

食べたくない、拒食。もしかしたら、今は食べたくないだけで、あとで食べるかな?気に入ったお菓子なら食べるかな?

盗られ妄想、嫉妬妄想・・・・、色々な妄想や幻覚がある。それは、本人の中では事実になっている。否定したら激怒する。物盗られは、探し物がある。なので一緒に探してあげる。見つからなかったら、時を改めて、また探そうと約束したりする。次の時に覚えてなければ、蒸し返さずにそっとしておく。嫉妬妄想は、薬を併用することも勧めるが、傾聴する。嫉妬の対象となるつがいから、少し距離を置いてみたりする。自分が不必要である、ダメである、重荷になっているなどの不安が一因になることもあるので、簡単な仕事でもいいので、本人に役割を与えたり、お願いして頼ってあげたりすることで、自己肯定感が上がって症状が和らぐことがある。幻覚についても否定はせず、傾聴する。

お風呂入りたくない⇒無理やり入れる⇒より嫌がる⇒断固拒否⇒無理やり連れていく、しつこく入れようとする⇒関係性崩れる、ストレスで不穏状態になる、風呂以外のことも拒否する

なんてこともありうる。風呂に入らないで死ぬことある?ニグレクトで風呂に入れないことと、拒否で入れないことは、ちょっと違うと思う。無理やり入れることの正義って何?

基本的には、認知症の方々の人格や意見、思想を肯定から入るべき。多くの場合、認知症でない方の常識とはずれてしまう事があるけど、それでも、命の危険が無ければ、肯定してあげたらいいのに。そのうえで、もしもリスクにつながるなということがあれば、私はこう思うけどどう?やってみない?やめてみない?と、強制せずにお勧めして、本人に選択させてあげたらどうだろうか?

もちろん、マンパワーの問題で一人一人にそれほどの労力と時間をかけられないという現実はあるのかもしれないが、それは、制度や会社の問題であって、患者さん本人には関係のないこと。他のところで時間を削減したり、そういったことを行いながら、他のことも同時に進めてみたりと、作業の効率化を図って、できる限り人間的な対応が望ましいと思う。

介護施設は、サービスの質は、本当にピンからキリまで、大きくその質が異なると思う。現在は、入居先が足りないくらいの状況で、作ればすぐに満床になってしまうくらいなのかもしれないが、高齢化社会とは言え、高齢者は徐々に減っていきます。そうなったときに、やはり、サービスが充実したところが生き残っていくのかな。

コロナ禍では、一時、体力のある他施設経営している大きな会社ばかりが残って、小さなディサービスや施設は、どんどんつぶれてしまいました。何店舗も介護施設を経営しているからと言って、サービスがいいとは限らない。むしろ、アットホームに小さくやっている個人経営の施設の方が、暖かいサービスを提供していることはよくある。介護制度が、労力の割に利益が少ないシステムになっているので、必然的に、大規模経営しているところは、薄利多売でも体力があります。小さい会社は、もともとぎりぎりの利益でやっていた中でのコロナにより、たくわえがなくなり、破綻してしまったのでしょう。

当クリニックだって、単なる個人経営の商店です。大した体力もないので、何か大きな問題でもあればすぐにつぶれてしまうかもしれない。かといって、私は、サテライトや支店をいっぱい出して、大企業にするつもりもありません。目下のところは、厚別区とその周辺のみに影響力を発揮できれば十分であると考えています。この狭い範囲の中で、とにかく、地域医療サービスを充実して、厚別区は住みやすいね、安心だね、と思えるような街になったらいいなと願っています。

脱線しましたが、キーワードは、

認知症患者さんでは、患者さん自身を肯定しよう。

です。

認知症患者さんも、程度は多かれ少なかれ、物忘れやその他の症状を不安に思っているはず。そこに、否定や叱責、強制などが来たら、より不安になり、反発したり、します。肯定することで、心が穏やかになり、不安が軽減し、聞く耳を持ってくれるようになるかもしれない。