2022年06月11日 こころ院長ブログ
外来や訪問診療で、診るべきは一瞬。
外来も、訪問診療も、基本的にはおんなじです。どこで診察しているかの違いです。
3分診療、5分診療などと揶揄されるように、待ち時間が長いわりに診察が短いと病院やクリニックはよく非難されますね。
繁盛している外来なら、1日に100人以上受診されます。
その100人に仮に5分診療したとしましょう。それだけで500分。6時間20分。
そのほかに、患者さんの入れ替え、診察ベッドの消毒、カルテの記載、処方箋の発行、処置の時間、休憩時間、などを挟んだら、9時間、10時間あっという間です。
そもそも、現実的に、一人当たり10分、20分、時間を取ってあげることなんて、ありはしないのです。それを、メディアが、面白半分で、医療業界を揶揄するために、3分診療なんて言葉をさもひどいことのように強調しているわけです。
おそらくは、不満のもとは、待ち時間と診察時間のギャップなのだと思います。10分待ちで、5分診療・・・、そんなに不満は出ません。それに反して、2時間待ち以上、なのに5分診療・・・・、あんなに待って、これだけ?不満のもとになります。そういったこともあり、予約制をとっているクリニックや病院も多いですが、予約しているのに1時間2時間待ち?ってなると、さらに不満がたまりそうですね。
スマホなどで予約できる制度、一見便利そうですが、それって、平等でしょうか?スマホが得意な世代には便利ですが、そういったものが使えない、苦手な高齢者は、結局後回しで、待ちぼうけにならないでしょうか?電話予約などでも、早もん勝ちになってしまいます。高齢者の患者さんがが多い当クリニックでは、そういったこともあり、予約制はとっていません(検診は、予約にしています。急がないことと、検査などで時間がかかるので、あらかじめ繁忙時間を避けるように予約制にしています)。
さて、3分、5分で適当に診ているのか、そんなことはありません。
診察してわかること、話をしてわかること、話さなくてもわかること、時間的な経過の事、いろんなことを医師は診ています。
過去のカルテの情報から、今日は何を診ようかな、気にしておこうかな、という事をあらかじめ考えています。それから、今日の状態を見て、顔色、表情、声色、声量、目、服装、服の汚れ、歩き方、立ち方、話の内容、前回からの続きの状態変化、検査データ、などなどを頭で考えます。
そのほとんどのものは、一瞬で判別します。他愛もない会話をすることも多々ありますが、その中での表情変化や態度なども診察しているんです。
だから、診察時間が短いと怒ったり、長々とお一人だけ時間を使って診察してもらわないと気が済まない、というようなことは避けていただけると助かります。混んでいない時はいいんですが、後ろにも同じように、診察を待っている方がいる、もしかしたら、すごく具合が悪いのに待っているのかもしれない、など、他者を思いやる気持ちを忘れずにいていただけるとありがたいです。
定期的に診ている人なら、パッと見て、会話するだけで、今日はいつもと違うな?と感じれば、時間をかけたり、掘り下げたり、検査をしたりします。
そのために必要なのは、いつもの状態を頭にイメージして、インプットする事なのです。
だから、いつも変わりない定期処方、定期診察でも月に1回受診してもらったり、隔週で訪問診療したりするのです。変わりがないことを確認する、変わりが無いから、リハビリテーションを施行できる、ちょっとした変化があるから、リハビリテーションの内容をちょっと変えるなどのことを日々しているのです。
変わりないんだから、そんなに来たくたいな、来なくてもいいよと、よく言われますが、間を開けると、いつものイメージが薄まり、微妙な変化にあれ?と気づけなくなってしまうかもしれません。
なので、当クリニックでは、基本的に訪問診療は隔週で、外来診療は1~3か月ごとに受診してもらっています。9か月ごとに受診されても、前のイメージがあやふやで、細かいことに気が付けるかな?ちょっと自信が無い。
リフィル処方は、ご希望の方には発行しますが、1か月処方を3回なら、3か月後に来てくれるので、そもそもそれなら、3か月処方でも良くない?3か月処方を3回分となると、9か月は来ないことになる。それって、大丈夫?意味ないとは言わないけれども、ちゃんと診察管理しているかって言われると、???です。近所のドラッグストアで売っているなら、そこで購入して、調子が悪いときだけ病院に来るレベルと大差ないのでは?と思ったりします。
保険制度が日本ほど充実していなかったり、根っからの個人主義、権利主義、義務主義、自己責任主義などがある欧米各国ではやっているリフィル処方を日本にわざわざ導入する意義やそれが日本の制度や国民性に合うのかどうか、私個人としては、合わないんじゃないかな、と感じます。