理想の職場って?

2022年05月12日 こころ院長ブログ

現在訪問看護ステーションのスタッフの募集しているわけですが、なかなか双方の条件が合わない。そもそも訪問看護自体が、看護師の中では、敬遠されがちなので、病院勤務スタッフよりも、応募が少ない。

そういった中で、複数の方とお話しすることがありましたが、多くの方が、前の職場は、自分の理想と合わなかった、おもってたのと違った、やりたいことができなかった、ということを口にされます。

自分の理想をもって、こうしたいああしたい、あしてあげたいと思うのはとっても大事です。

各事業所も、それぞれの方針や想いをもっているので、なかなかそれと合致するということが無いのでしょう。

当クリニックも、特にまっすぐな熱い想いを持っているので、その熱量が合わなかったり、想いが違ったりということは、往々にしてあるのでしょう。

ですが一つ、転職を考えられている方は、自分の想いや条件を見直してみてください。転職サイトには、ものすごく、好条件の情報などが散見されますが、実際は、そんなに多くの好条件な職場があるわけではありません。

たとえば、高収入である、という条件はどうやって生まれるのか。医療、看護、介護の業界は、会社の売り上げは、大方決まっています。なぜならば、提供するサービスの質にかかわらず、同じ内容のサービスなら一定額のレセプト料金が決まっているからです。ゴッドハンドの手術も研修医の手術も、料金は一緒です。つまり、スタッフに高収入が割り当てられているということは、一人当たりに割り当てられている人件費の額が大きいという事。その仕組みは、いくつか考えられます。会社の売り上げが大きい。。。ということは、多くの患者さんを看ているという事、つまり、仕事の量は多いんじゃないかな、大変なんじゃないかな?ということが推察されます。他には、人件費を分けるスタッフのんずっが少ないので、一人当たりの取り分が多い、つまり、これも同僚が少ないので仕事は大変なんじゃないかな?ということが考えられます。他には、すごくいい会社で、利益分を極力減らしてスタッフに還元している、とも考えられます。

労働時間が少なく、休みがいっぱい取れる、ということは、同僚がいっぱいいるのかな?仕事が少なめで余裕があるのかな?ということは、一人当たりの稼ぎが少ないので、貸家の売り上げが、スタッフ人数に比べて少ないので、人件費の割り当てが少なくなりそう、つまり、給与は少なめなのかもしれない。

労働時間が少なく、休みはとれて、給与が高い、そんな夢のような職場があったとしたら、通常は実現が不可能です。それがあるとしたら、勤務中はものすごい激務であるか、何か通常の業務以外の高い利益を生む仕事があったり、別の事業で得た利益をこちらに回して切るのか、はたまた、労働条件自体が良く書いてあるけど嘘、って可能性もある。

具体的な仕事として、患者さんには、こうしてあげたい、こういうことをしてあげたい、こういう対応をしてあげたい、看護師なら、患者さんを良くしてあげたいという思いが多かれ少なかれあるものです。それが、理想的なものであっても、現実的なものなのかどうかを今一度考える必要があります。理想論は、比較的語りやすいです。患者さんに寄り添って、患者さんの目線で、親身になって、それに伴い、どういったサービスを提供するのかを考えればいいのです。しかし、自分はスタッフだからといって、それを会社の求めるだけでいいのか?求めたけどやってくれない、だから悪い事業者だ、やめてやる、転職だ、理想的な事業所を探すんだ、それでいいんでしょうか?

事業所の社長や所長の観点でも、自分の理想を考えてみる必要があります。自分が求めている理想像は、実現可能なものなのかどうか。訪問看護といえど、ビジネスサービスの一環です。上記のように訪問看護師自身も、自分の労働条件を良くしてほしい、自分の生活も充実させたいと思っています。それをかなえつつ、失業しないように、倒産しないように、事業所自体に充実したスタッフ待遇ができるようにしたうえで、事業所を存続するための利益を生まないと、事業所がつぶれてしまいます。なので、あれをしたい、これをしたい、こういったものを使いたい、いろいろ患者さんのサービスの質を上げたい、この人をみてあげたい、こういうことをしたいと色々理想があるかもしれないが、それを行うことで、事業所の運営上、赤字にならないだろうか?そこにこれだけの経費をかけても大丈夫なんだろうか、そういうことをするためのマンパワーは確保できるのだろうか、そこに十分な待遇をできるのだろうか。それだけの売り上げをあげられるのだろうか、その売り上げを上げるために、過酷な労働が強いられないだろうか。そもそも、その患者さんのためにと思っている自分の理想が、他者が見ても理想的なものなのだろうか。

そういったことを今一度検討してみて、やっぱり、今の職場はおかしいな、と思えば、より良い職場を探すことになります。ですが、自分の理想をがっちり会う事業所なんてないと思った方がいいです。そりゃそうです。他人が作って、他人が育てた組織ですもの。最初は、ちょっと違うなと思っていても、そこに加わって、自分の想いを伝えてみて、仲間と相談して、仲間の想いを自分の想いに寄せてもらったり、逆に、自分の想いを相手に寄せて行ったりして、同じ方向を見ていけばいいんです。

結局、最後まで、自分はこう思うからこうしたい、こう思うからやりたくない、おかしいと思うけど従っているだけ、なんて思っていたら、充実した仕事はできない。そういった人が本当に自分の理想の訪問看護をしたいなら、借金をして、自分でリスクを背負って、自分の事業所を作るしかない。ただし、そうなった後で、現実的に事業所を維持するには、すべての理想を現実にするには、レセプトや介護・医療制度が整っていないという現実に直面すると思います。ごくまれに、理想の経営者に恵まれることはあるのだと思いますが、レアケースです。どうしても何らかの不満は生まれると思います。そのたびに転職していても、理想の職場環境には巡り合えないでしょう。そうするよりも、ある程度の納得のいく環境で、よりよい環境になるように提案し、妥協し、折り合いをつけて、より理想的な環境を作るように努力する方がいいと思います。

なんて、ながながと、いやぁな話をつづりましたが、当法人では、訪問看護師を募集しています。本当の理想的な訪問看護ステーションを作りたくて、早1年たちましたが、理想には至っていません。人手が足りないからです。訪問看護サービス自体は、かなり理想的な地域医療を行えていると思っています。ですが、もう一つの理想、訪問看護師の充実した快適な労働条件の方です。これを実現するには、スタッフの人数が足りないからです。理想を実現するには、曜日の数だけのスタッフが必要です。現在は、正規職員4人、他3名の掛け持ちスタッフがいますが、あと、3名の正規職員が必要です。これぞ訪問看護、看護師の醍醐味だというような訪問看護を提供しています。看護師をやっているなぁという充実感を持ちつつ、週休2日、週1回の待機、週4日の日勤という人間らしい生活が送れる訪問看護ステーションを目指しています。未経験でも大丈夫です。病院勤務で看護師としての標準的なスキルと知識があれば、何とかなります。