札幌市にもようやく在宅嚥下リハビリの春が来る? Vol.2

2026年06月05日 こころ院長ブログ

8年前は、在宅での積極的な嚥下訓練は、敬遠されておりました。

さも当たり前のように、”誤嚥したら大変だ。リスクが高い。患者さんのためにならない”

と、口をそろえて話すのが聞こえました。

いろいろな専門科の先生がおられますが、在宅において、嚥下をちゃんと見られる、

診た経験がある医師がどれほどいたでしょうか。

自分に自信がない、経験がない、リスクを負いたくない、

そんな深層心理でもあったでしょうか。

それを、患者さんのために、と置き換えるのは傲慢?理不尽?ではないのでしょうか?

患者さんは、何がっても食べたい、ご家族様は、できれば本人が食べたいものを少しでも食べさせてあげたい、

そういった想いを吐露されることが多いです。

私は、その切なる想いを何とかかなえてあげたい。できれば少しでもリスクを減らし、安心して食べさせてあげたい。

その形が訪問リハビリテーションSTでした。

当初は、嚥下訓練、言語聴覚士のリハビリは、一部の理解をしてくれるケアマネージャーさん以外は、なかなかケアプランに

入れてくれませんでした。

リスクがある、単位がない、言語聴覚士を入れるくらいなら身体リハビリを入れたい、増やしたい、嚥下訓練するよりもヘルパーの

単位を増やしたい、ディサービスを増やしたい。。。。

様々な理由でなかなか言語聴覚士のリハビリはプランニングされない日々が続きました。

人件費は毎月かかるが、リハビリの依頼は少ない。最初から分かっていたので、必要経費として考えていましたが、

嚥下のリハビリが在宅医療で広がらない事には、不満がありました。

それでも、こつこつと、1例1例着実にこなしながら、家でも食事ができる喜び、食べさせてあげられる喜び、感謝、そのような声が一つまた一つと

伝わってくるにつれて、徐々に厚別区内の在宅嚥下訓練、家でも食べる、ということは、認知されてきておりました。

そして、実は、嚥下訓練を積極的に行って、結果として誤嚥性肺炎を起こす事例は、ごくわずかで、懸念されていた誤嚥リスクは、

STが介入して訓練をすることで、増えたりはしていないと思います。

むしろ、潜在的な誤嚥のリスクを減らしているのではないかと思われます。

しかし、そこにもう一つの問題が発生します。

言語聴覚士たち自体の想い、があるのではないか?

病院や施設においては、直接嚥下訓練は、万が一誤嚥や窒息が起こっても、周囲に助けを呼べば医療職が集まって助けてくれるが、

訪問リハビリにおいては、完全一人の状態である。そこで何か起こったらどうしようという不安感、恐怖感は常にどこかにあるのではないか?

同じ訓練をするなら、在宅で、訪問ではやりたくないなぁ。そんな気持ちを持つ言語聴覚士が実は多いのではないか?

実際、訪問、在宅の現場に言語聴覚士は、特に少ない。

これもまた、在宅嚥下訓練が広がらない、認知されない一因ではないか?

和他h氏は常日頃、言語聴覚士には、誤嚥になるリスクは常になるが、積極的に嚥下訓練をして、できるだけ本人や家族が望むような

食事ができるようにさせてあげてほしい。誤嚥性肺炎などが起こった際は、主治医である私が責任をもって治療する、もしくは病院搬送を

手配する。だから、頑張ってリハビリしてあげてほしいと。

それでも、やはり、一人で患者さんに向き合うのはストレスとプレッシャーがかかることだろう。

それを超えるやりがいとやる気、そんなものを感じている人が、今もなお訪問リハビリSTをやっているのかもしれない。

当院の事業所でも、希少な在宅言語聴覚士を2名抱えるメガSTステーションであった時期があり、退院時、絶食経管栄養であった患者さんが、

在宅で完全3食経口摂取、経管栄養離脱するような症例もあったり、在宅嚥下訓練の最盛期がありました。

現在は、所属する言語聴覚士はZERO、訪問リハビリテーション事業所としては、ST部門を閉鎖してしまいました。

しかし、そこへきて、いよいよ札幌市医師会でも札幌市内での在宅嚥下について本腰を入れた活動が行われ始めています。

私の孤軍奮闘は、ちょっと時代の先を行きすぎました。独りよがりの様でしたが、医師会が動き出すまでの厚別区での

在宅嚥下の橋渡し的役割を担ったのではないかと思います。

もう私が一人で頑張る必要はない。

これからは、医師会、札幌市が中心となって、在宅で食事ができるように訓練していく、評価していく、というながれが作られていく。

胃ろう、腸瘻も必要である。リスクを冒して経口摂取させなくても、服薬、栄養、水分を確実に投与できる。

が、最後まで食べることをあきらめさせない、優しい在宅医療が、札幌市に、厚別区に、芽生え、受け継がれていくといいなと思います。

ちなみに、現在は、私は、他者の訪問リハビリテーションにかかわってくれている言語聴覚士さんに、在宅嚥下の訓練を委託して、

他力本願?で在宅嚥下の推進を続けています。

食べることは生きること、生きることは食べること。

食べることは喜び、喜びは生きる力となる。