回復期リハビリテーション 第4話

2022年05月30日 こころ院長ブログ

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これから、回復期リハビリ医になろうかな、と思われている先生、なったばっかりで分かんないんだけどなという先生に、少しでも助力となればと、回復期リハビリ医に必要なスキルと知識、その身に着け方など、思いつくものを列挙してみます。

まずは、医療知識、スキル。始める段階では、リハビリの知識はなくても大丈夫です。リハビリを勉強したい、少しでも患者さんに良いリハビリを提供したいという情熱があれば、療法士たちと話しながら、教わりながら、自然と身につきます。1症例ずつ真摯に取り組んでいけば、自然と必要な知識やそれ以上の知識が身についていきます。よく使う知識やよく出くわす疾患も見えてきます。リハビリの知識よりも、内科的なスキル、外科処置的なスキルがあった方が有用です。回復期病棟では、一般病棟のような内科疾患や外傷などの一般外科疾患がしばしば発生します。それに対応するスキルや知識が意外と看護師や医師の中で、充実していないことがあります。医師がわからない、自信が無い、慌ててしまうと、病棟全体が浮つきます。どっしり構えて、なんでも診てやる、治してやる、というような安定感があると、とても喜ばれます。骨折は整形外科、脳疾患は脳外科、というような専門治療には転院しかありませんが、尿路感染、肺炎、重度褥瘡、胃腸炎、イレウス、不穏、などなど、自院で対応できそうなものは、そのまま治療できると、リハビリの中断期間を極力短くすることができます。そういった知識や経験は、回復期で新たに習得することもできますが、ある程度は回復期に着任する前に身に着けておくことが望ましいと思います。

次は、話術です。回復期リハビリでは、とにかく、会議や説明、会話が多い。話術が得意であると、とても重宝されます。患者さんやご家族への説明が、月に1~2回は最低あります。もち患者さんは、20~40人程度。単純に毎日2~3件の患者説明があるわけです。それに伴う担当者の会議があり、それ以外に病状変化の説明や入院時の説明などもあります。とにかく、丁寧に、穏やかに、わかりやすく、流暢に話せる話術はとても重要です。

次は、多職種との連携能力です。回復期では、患者さん・家族はもちろん、前医の先生、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、ヘルパー、社会福祉士、ケアマネージャー、薬剤師、栄養士、施設の関係者、義肢装具士、介護福祉の関連の業者、MR、役所関係者。。。。などなど、多くの職種と協力して患者さんをサポートする必要があります。そういった、多職種との良好な関係作りができるコミュニケーション能力が必要です。昔ながらの、威張りながら、威圧的な、なんでも多職種に命令する、押し付けるといった姿勢はNGです。また、多職種は、それぞれの専門化であり、他の分野については一部弱いところもあります。その辺を理解したうえで、指導、指示、確認などをする必要があり、丁寧にいろいろ医学的なことを指導する事で、チーム力がどんどん向上します。また、最終責任は、概ね主治医がとり説明することになります。いかに自分のチームを育てられるか、のちの自分の仕事のクォリティと効率を上げることになります。リハビリについては実務は、療法士の方が詳しいです。療法士との良好な関係性を構築して、積極的に交流することで、現場の情報をどんどん仕入れられると、臨床リハビリ医としての経験値をどんどん稼げるようになります。

そして、書類などの雑用能力です。とにかく、書類が多い。インフォームドコンセントンの記録、会議内容の記録、色々な同意書、計画書、報告書、診断書、意見書・・・・、いちいち、書類に時間を取られていたら、残業は必至。いかに、必要十分の書類を早く、ため込まないように作るか。その能力は大事です。

最後に、在宅に返してあげるんだ、少しでも良くしてあげるんだという情熱。これが、根本です。これがあることで、多少の面倒なことや分からないことも乗り越えることができます。情熱があれば、周囲にそれが伝わり、周囲の人々が好意的に、協力的になっていきます。そうすることで、チームが一丸となって、効率の良いリハビリが行えます。逆に情熱が無いスタッフは、居づらくなり、チームを離れてしまう事もあるかもしれません。

 。。。あれ?なんか、専門的のものはないな・・・。そうです、特別なものは、始めるにあたっては必要ありません。必要なものはあとで、身につければいいのです。あらかじめ準備しなくても。

では、のちのちどんなことができるようになると便利かなぁ。

 

臨床的なリハビリテーションの知識、計画を立てる力。医学のみにあらず、化学、科学、物理、数学、歴史、環境学、ロボット・機械、心理、・・・・なんでもあらゆる雑学をフル稼働して少しでも患者さんの為になること荷利用できる知識や経験。

義肢装具の判定。義肢は、義肢装具士に依頼するのですが、丸投げではなく、自分で考え、診断できる、指導できるようになったり、いつ何を使おうかなという知識や経験はあるといいでしょう。判定士の研修は受けられます。

環境調整・家屋指導の知識。一般的な知識は、文献などで直ぐに学べます。そんなものよりも、実際に生活する人の身になって、その目線で考えると、何が必要で、何に困るのか、がわかり、それを解決する方法をあらゆる知識を持って考えます。

中心静脈栄養カテーテルの穿刺・管理、IVHポートの増設・抜去。胃瘻の増設なんかはできると、いちいち転院する必要が無くなります。

褥瘡の治療。ただ軟膏を付ければいいというものではない。栄養、除圧、外科的処置なども含めた総合的な治療。

栄養指導は基本中の基本。栄養管理の研修なども受けるといいでしょう。NSTチームなどのメンバーになることも勧めます。栄養なくしてリハビリの効率はあり得ない。

肺炎、尿路感染、腸炎程度の感染症の治療、イレウス程度の治療。とにかく、転院せずに治せるものは、自分で治せるようになるといいでしょう。

こういったことができるようになったら、スーパーな回復期リハビリ医となり、その病院の回復期病棟のエースとなり、みんなの頼りになる医師となれることでしょう。

すばらしい回復期リハビリテーション医が増えることを願います。

上記は、すべて、私の10年の回復期リハビリ生活の中で感じた私見ですので、エビデンスはありません。