クリニックにおける、看護師の雇用の考

2021年08月02日 こころ院長ブログ

クリニックは、病院に比べて、経営基盤・経済力が希薄です。そのため、稼げるところで稼ぐ、削れるところは削る、という経営方針が基本となっていました。看護師は、外来でも診療補助でも、直接的に収益を上げることはほとんどありません。医療事務も同様です。そのため、多くのクリニックでは、ぎりぎり最小限度の人数、マンパワーで人件費を削減します。それにより、労働環境は劣悪となり、離職率が上がります。人が入れ替わることで、仕事に慣れたスタッフが少なくなり、仕事効率やサービスの質が低下します。そして、労働環境がさらに悪くなります。・・・悪循環に入り、抜けられなくなります。

 以前から言っているように、医療は人です。なので、人件費は、とことんかけるものです。医療事務のマンパワーは、クリニックの顔となるので、その人柄は、クリニックの評判に直結します。劣悪な環境で、疲れきっていては、評判はがた落ち。レセプト請求も、しっかりできれば、取りこぼしなく収益をあげられますが、マンパワーが不足すれば、いくら診療・看護を頑張っても請求ミスで、収益が減少します。

 看護師は、クリニックの中では、医師に匹敵するくらいの能力と権限を有します。もちろん、有能な医師が一人増えれば、今の倍くらいの業務ができて、1.5-6倍くらいの収益を上げられるかもしれません。しかし、医師に高額な人件費もかかります。看護師は、もちろん人件費は高額ですが、そのマンパワーを充実させることで、実は、収益もかなり上がります。直接的に収益を上げなくても、医師の指示のもと、今まで医師がしていた業務を引き継いでやってくれたり、情報を収集して判断・報告してくれたり、しっかりとした準備をしてあとはやるだけの状態にしてくれたり、膨大な情報や業務を整理してくれたり、患者さんの心に寄り添い、しっかり話を聞いてくれて、本当は何に困っているのか、何を伝えたかったのかを聞き取ってくれたり、医師と患者さんの間の距離を埋めてくれたり・・・・、そうすることで、一人の医師ができることが、ぐっと増えて、おそらく収益的にも1.2-3倍くらいに増えるくらいのインパクトがあります。そのためには、ぎりぎりのマンパワーではだめで、潤沢すぎる看護師の人数が必要です。そこの人件費をかけないと、働き方改革はすすまず、労働環境が劣悪となり、離職率が高まります。

 もう、医師でも看護師でも、劣悪な労働条件で、善意だのみで何とか働き続ける時代では、なくなりました。医療従事者も、一労働者として、休暇とプライベートな時間を楽しんでもいい時代になります。もちろん、勤務時間は、その分、過酷になることはあるでしょう。それでも、交代でき、分担でき、休める環境を整備しないと、今後は、偏在する医療従事者を確保することは難しくなるでしょう。単純に、給与を上げればいいという時代でもなくなりました。