回復期リハビリテーション 第3話

2022年05月29日 こころ院長ブログ

3

回復期リハビリの医師はどんな人?何が求められるの?いい回復期リハビリ医ってどんな感じ?

これは、かなり独断と偏見がまじりますが、10年間、回復期リハビリに身を置いた医師のたわごとと聞き流してください。

まず、はっきりしていることは、多くは、回復期リハビリ医=リハビリ専門医ではない、という事です。リハビリ専門医は、かなり希少な医師です。その多くは、大学病院や大きな病院に身を置いており、専門的なリハビリテーションに携わっています。

回復期リハビリ医は、専門的なリハビリの研究をしたり、教育をしたり、施術したりということは基本的にしません。療法士が、十分なリハビリが施術できるように、患者さんの状態を診察、治療、コントロールすることが主な仕事です。そのため、多くの回復期リハビリ医は、内科・外科・脳外科・整形外科・そのほかの科から、コンバートした医師が担当していることが多いです。なかには、リハビリテーション臨床認定医を取得している人もいます。が、あくまでも臨床認定医であり、専門医のような、リハビリも専門職のような知識と経験はないですが、リハビリの臨床現場での必要な知識と経験が豊富な医師であることが多いと思います。これは、第2話でもお話ししましたね。

いっぱいいる回復期リハビリ医でどんな人がいい医師なんだろうか?

これは、人それぞれ、その人が求めるものによって異なります。そういっちゃうとおしまいなんですが。私見で言うと、外科医は、かなり便利です。細かい処置が大体何でもできて、手術の前後での内科的な管理は、栄養管理、循環器、呼吸器、糖尿病、感染症、その他いろいろ必要ですので、内科的な知識もバランスよく備えていることが多いからです。回復期の患者さんは、術後や治療後の2週間~1か月くらいで転院してくるため、完全には病状は安定していないことが多くあります。そのため、全身管理を得意とする外科医や内科医は、重宝されます。また、回復期の患者さんは、栄養状態の悪さや高齢者であることも多く、褥瘡や皮膚疾患、術後の創部のトラブルなども多く、その対応が求められます。なんでもかんでも、自分では診られないから、自信が無いからと、転院させたり、他院・他科受診させていたら、その分、大事なリハビリ時間がどんどん無くなってしまい、効率の良いリハビリテーションが行えません。自分で治療できれば、リハビリの合間に治療ができちゃうから、それだけで、より多くのリハビリ時間が確保できます。これは、実は、結構大きいことなのです。たかが23日の安静・リハビリ中止で、12か月の後退、なんてこともありうるからです。その結果、退院先が変わってしまう事すらあります。家に直接帰れたはずの人が、老人保健施設経由でないと帰れない事態になったりします。なので、回復期リハビリテーション委に求められる資質の一つは、全身管理、内科的な管理、できれば皮膚・一般外科的な処置をすることができる、などがあると思います。

 知識や技量の他に、主治医の想いが必要です。よかれあしかれ、回復期リハビリ医は、実は、なってくれる医師は意外といっぱいいます。多分ですが、私は、結構、人気のある方の、たぶんいい方?の回復期リハビリ医だったと思います。とにかく、一人でも多く、少しでも良くしてい上げたいと、常に思いながら、リハビリテーションを少しでも効率的にできないか、いつも考えていたからです。なのに、回復期リハビリをやめてしまって大丈夫なのかな?とも思いましたが、こういう人気がある職場は、誰かが抜ければ誰かが入ってくるものです。それよりも、私は、ばんばん機能を回復させて、在宅に帰って行った患者さんたちが、在宅に戻って数日から数か月で、どんどん機能低下してしまい、転んだり肺炎になったりしてまた病院に戻ってくる、そういったサイクルが起こっていたことに危うさを感じ、回復期リハビリが終了ではない、退院したあとの在宅生活のなかで、しっかりリハビリして、機能を維持向上させる、退院してからの生活の方が長いのだから、在宅に帰ることが目的ではなく、在宅で安全に楽しく人生を送り続けることが目的だ、そういった目線で管理してくれる在宅クリニックが、訪問リハビリテーションを行ってくれる事業所が必要だ、それが特に厚別区には足りない、とかんがえ、これが無ければ、回復期リハビリでの努力と医療費は、無駄に終わると考え、3年前に自分で、その在宅復帰以降の受け皿を作ろうと、開業に至りました。それは、また別の話ですが。

 同じ、回復期病院でも、主治医が変われば、受けられるサービスも変わってしまいます。その患者さんの退院後の生活の質をどれだけ上げられるか、残りの人生の楽しみをどれだけ増やせるか、そこに熱い思いを持つ私と同じタイプの主治医に当たれば、リハビリの目標を具体的に立て、できるだけ高い目標で、望むことを聞き出し、できるかできないか、可能性が高いか低いかよりま、やるだけやってみようと、リハビリ計画を立てて、実行してくれます。それに顕著な部分は、歩行と食事です。ベッドより車椅子、車椅子より歩行器・杖、杖より独歩、屋内より屋外の方が、より楽しみは増えます。ですが、回復期医師でもリスクヘッジを重視する方が意外といるのではないでしょうか。転ぶ、骨折のリスクを考えます。上記と逆の発想になります。外の方が家の中より危険だから、屋外にはいかせない、独歩の方が杖・歩行器より転びやすいから杖・シルバーカーは必須、歩くと転ぶので車椅子中心で歩かせない方がいい、車椅子に乗せるときに転んだり勝手に乗ろうとして転ぶから、基本ベッド上でトイレのみ車椅子介助で、車椅子で転落・転倒する可能性があるので、寝たきりにしよう、大声を出す、意思疎通が難しいので薬で静かにさせよう、眠らせよう、など、リスクを考えすぎて、できるかもしれない行動をどんどん制限して狭めて、結果としていろいろな患者さんの可能性をつぶしてしまう事もあります。高齢者の誤嚥はかなりシビアです。誤嚥すれば、死んでしまう事も。誤嚥性肺炎は避けなければならない、こわい。だから、食事はもうあきらめてください、一生、なので、胃瘻PEGにしますか、経鼻胃管にしますか?点滴にしますか?何もしないで自然に診ますか?と言われることもあります。ですが、食事は人生の大きな楽しみの一つです。中には、窒息してもいい、誤嚥してもいいから、食べさせてほしい、食べたいと懇願される方もいます。そういったリスクは説明したうえで、同意をいただければ、私はどんな状態でもSTによる嚥下訓練、経口摂取を勧めてきました。が、実際は、そうは言われても、あとで肺炎になったときにもめたりするのは嫌だから、責任取るのは病院だから、ダメなものはダメ、と言われることもあります。ですが、実際、急性期病院入院中の段階では、もう一生食べられないかもしれませんと言われていた方が、訪問リハビリテーションを行い、驚異的に回復されて、好きなものを好きなだけ食べられるようになった例もあります。これは、急性期の先生の見立てがどうこうではなく、患者さんを診ている時期が違う事やリハビリが効果的であったり、嚥下障害が急性期から亜急性期・慢性期にかけて、自然回復する可能性があるという事も要因です。色々なことを無視して、食べさせるから誤嚥する、食べさせるのは危険、だから、禁食にします。点滴しますか、胃瘻にしますか、経鼻胃管にしますかといわれ、じゃぁと胃瘻を作ったら、もう栄養は大丈夫だからと、それ以降、食べさせることを考えないで一生、口から食べられないなんて悲しい結末を迎えることになる方もいます。言語聴覚士による食べる訓練も、誤嚥のリスクが少ない間接嚥下訓練と、実際に飲食物をいろいろな形態で利用して訓練する直接嚥下訓練がありますが、誤嚥音リスクを恐れすぎて、食べ物を使った直接嚥下訓練は一切実施しません、なんて、回復期リハビリや訪問リハビリも存在します。諦めたらだめなんです。私なら、食べたいなと思いますね。ですが、主治医が、もしくは病院や事業所が、すでに食べさせることをあきらめ、誤嚥を恐れすぎていたら、いくら患者さんやご家族が訴えても、訓練は受けられないことがあります。回復期リハビリではセカンドオピニオンも難しいですし。院内での医師の交代は、場合によっては可能なことがあります。要は、回復期リハビリ医が、何かあったときの病状変化については自分が何とかするから、この患者さんの可能な限りの機能回復と生活の質の向上を療法士たちが全力でとらいしてくれと、熱い想いと診療能力を持っているかがとても重要です。

 なので、回復期リハビリ医にに必要なものとは、全身状態を何とかコントロールできる医師としてのスキルと患者さんを良くしたいという熱い想い、ということになります。そういった熱い回復期リハビリが増えれば、在宅生活をよりよく長く過ごせる患者さんが、もっと増えるんじゃないかな??