2021年06月29日 こころ院長ブログ
という記事を読みました。余計な延命はしてほしくない、点滴や胃瘻はしてほしくない。その希望は、当クリニックではかなえてあげられるように、治療の選択肢を考えうるものを提示して、選んで、同意していただいています。ただ、自然な形で楽に最期を、ということには賛成ですが、それだけでいいのでしょうか?症状が楽に、だけではなく、最後まで、何かを楽しみたい、家族と思い出を作りたい、ペットと戯れたい、友人と話したい、そんな楽しみをぎりぎりまで、探し続けるのもありなのかなと思います。点滴や胃瘻は、その一助になるものでもあります。メディアはとにかく、胃瘻は無駄な治療、悪としてしか報道しませんが、胃瘻はただの手技と栄養摂取のためのデバイスであって、延命治療ではありません。口から食べられない、服薬できない、水分・栄養が不足していしまう方に口→食道→胃のルートを皮膚→胃にバイパス手術をしただけです。食べ物を胃から消長、大腸と消化して一過程があり、点滴よりもむしろ自然なことです。喉頭癌や食道癌などの手術で経口摂取ができなくなった場合には、胃瘻が生命線となります。この胃瘻は、果たして悪でしょうか。口から食べられなくなったら、胃瘻を作ったら、もう無駄な延命、医療過誤、ただ生かされている状態なんでしょうか、無駄な人生なんでしょうか。
胃瘻を作った後、必死でリハビリして、また、口から好きなものを食べることができるようになり、胃瘻を閉鎖した患者さんを何人も治療してきました。胃瘻は作った後にも、閉鎖することができます。今は、口から取れなくても、胃瘻で栄養を維持しながら訓練することで、全部ではないものの、もしかしたらもう一度、食べたいなと思っていたものが一口でも食べられるようになるかもしれない。無理して食べて誤嚥するより、胃瘻に頼って、無理ない程度に食べる方が安楽で安全だし、本人や家族のリスクや負担が少ない。食べなきゃいけない、とプレッシャーは食事を苦痛にしてしまうけど、好きなものを好きなだけ食べればいい、栄養は胃瘻で行けるから、となると、食事がまた楽しくなる。胃瘻が嫌だから経鼻胃管?むしろそっちの方がひどい。鼻からkぅだがずっと入っているなんで、リスクも高いし、見かけ上も良くない、自己抜去のリスクも高い。 私は消化器外科医として、リハビリテーション医として、内科医として、胃瘻は常に治療の選択肢に入れています。その必要性、有用性がある方にはお伝えして、同意が得られた場合には、活用しています。一般に言う、胃瘻の悪は、具体的な胃瘻の目的と利益を十分に検討せず、病院側の管理の問題やなんとなくな感じで利用するから。個々の患者さんにこういうメリットがあるので、というところを突き詰めて検討し利用すれば、こんなにいいものはない。食べられなくなったら、自然死を待つだけ、それが本当に自然なこと?一度食べられなくなったと診断されたら、もうだめなの。リハビリして、食べられるように頑張ってみないの?歩けなくなったら、もう寝た切り決定なの?歩けるように、車いすでできることを増やせるように頑張ってみないの?その先に、現在ではあきらめてしまった、家族や友人と作れる楽しい、うれしい想い出があるかもしれないのに。あきらめてしまったら、その時点で、リハビリテーションは、かなわなくなります。リハビリテーションは、最後のその時まで、何らかの希望と目的をもって行うものです。